
今号から、なかなかお話を伺う機会のない現場の先輩方のお話を伺って日常の業務に活かそう!という想いを込めて、シリーズ化してお送りします。第一弾は、大倉民江さん(第一ブロック・自宅会員)です。複数の病院での相談室立ち上げから関わった経験、ソーシャルワーカーとして熱い想いを持ち続ける秘訣、若いMSWに向けて熱いメッセージを語っていただきました。
■ 相談室の立ち上げはどこも同じ-相談室なし、電話なし
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経験者のMSWが欲しい、ということで入職したが、病院としては、転院先を見つけて欲しいということだったと思う。でも、相談室はない、専用の電話もない。患者さんだけではなく看護師さんも「市役所の福祉課?」、「何する人?」って感じだった。最初は病院の動きを知りたかったので受付をやらせてもらった。カルテの出し入れ、書類の受け取り、救急入院の患者さんのカルテ作りなどをした。その患者さんの病室に顔を出して声をかけたり。そんなことをしながら、ドクターから「何かこの人役に立つな」と思ってもらうようになったりしていったと思う。過去の経験を活かして、生活保護の要否意見書をカルテ内に整理したり、身体障害者手帳の診断書をドクターに書いてもらうように依頼したり。今ここでできることから始めた。しかもドクターの助けにもなるようにした。患者さんには「何か困ったことあったら受付にきてね」って声かけしていた。受付にいたって受付の人と違う相談に乗ることでMSW業務はできると思う。頼まれたことは何でもやった。中にはMSWの仕事とは言えないようなものもあったけれど。でも、そういう仕事も引き受けながら、ドクターや看護師さんたちに問題を整理して解決方法を示しながら、MSWの仕事を少しずつ理解してもらっていった。
病院の中には一人くらいMSWの仕事や私個人に興味や関心を持ってくれる人がいるものなのね。看護師の中でも相談を直接持ってきてくれたり、個人的に仲良くなったりしながら、少しずつ関係を作っていった。「MSWです」って変なプライドではなくて、MSWとしての本当に大切な仕事をするために、謙虚に、患者さんはもちろんドクターや看護師にも「相手が困らないようにする」ということを心がけていた。院内スタッフとの連携の為に、相談室への依頼箋や連絡箋もいくつか項目を作って丸をつければいいだけのフォームを用意した。事務に対しては、やはり経営ということが評価につながることを考えて、毎日日報を提出していた。「一月に一回でいいよ」と言われるまで、毎日提出していた。ケース記録も試行錯誤しながらフォームを作っていった。日報やケース記録はそれまでの病院勤務での経験を活かした。兼務でベッドコントロールとして入院係にいた時も、自分がすべきMSW業務をきちんとやりながらベッドの稼働率を上げていった。その結果、病院の重要な会議である診療会議にも参加させてくださるようになった。そして、診療会議には相談室の日報を提出して、唯一福祉の立場から問題提起をしていった。相談室も大切な存在となりつつあった。退職するときには病院の中で一番欲しかった場所に確保することができた。
病気になって生活上困っている人、その人の生活を同じ生活者として、同じ土俵に立って自己決定を促す人がMSW。医師や看護師は医療を提供する人であって、同じ生活者として少し立場が違う。生活に困ったことを解決するために、あるいは解決につながらなくても協力をする。そのために、MSWの最大の武器である「聴くこと」が大切。雑談をしたり、廊下で挨拶をすることもとても大事なこと。病気になって困っている患者さんの為に働くこと、医師や院内スタッフや転院先のスタッフや役所の人や、その他相手が困らないように、スムースに物事が進むように、その手伝いをしているのだと思う。そのためにもMSWの雇用や資格としての身分保障は必要なこと。MSW自身が生活の安定がなくては他人の生活の困った相談にはのれない。
19年6ヶ月の間、やめたいとよく思った。それは患者さんに対しての援助で。院内の人間関係ではない。挫折を感じたけれど「自分の力が足りないんだ」と思った。周りの人には「お人よし」と思われていると思う。裏切られたり騙されたりすることが一番辛いことだけど、それでもいいと思っている。病気の患者さんが元気になって帰ることが病院の使命であって、そこの場にいることが喜びでもある。亡くなって帰る患者さんの家族から「親切にしてくれて…」と言われると、ソーシャルワークをしていたんだ、と思う。そんな場にいられることが嬉しい。
山岡惣八さんの本の中でね、徳川家康が言ったことだけど、人には必ず長所が2つ短所が2つある。そのうち長所の1つはあるもので、そこをほめる。患者さんに対しても、院内スタッフに対しても同じ。ほめられて嫌な思いをする人はいないから、人間関係も結果的によくなる。経営についても、大きな組織でも小さな組織でも基本は同じことだと思う。それから、何か一つでも得意な分野をしっかりやって、自信を持ちなさい、と言いたい。「優しさ」を売りにしたっていい。それから、MSWであることを権威的にするのではなくて、大切なのは病院の中できちんとソーシャルワーク業務をすることなのだから、そのためには、時には低姿勢であったり「自己犠牲」的な態度も必要だと思う。結果的に上手くいけばいいのだから。
組織の中でソーシャルワーカーが専門的知識と技術を使いながら、どういう業務を行っていくか。そのためにはソーシャルワーカーとして患者さんはもちろん相手の話を謙虚に聞くこと、そして社会資源の活用は想像し創造すること。解決へのプロセスは自分の持っている力を出し切って見て下さい。そのことが大切!その積み重ねが自分の財産と自信とになってくるのです。
(談:大倉民江さん、文責:出版部) |