なかなかお話を伺う機会のない現場の先輩方のお話を伺って、日常の業務に活かそう!という想いを込めてスタートしたシリーズの第2弾です。今回、お話を伺ったのは、田中千鶴子さん(第6ブロック・東京都職員共済組合青山病院)です。
 療育施設と専門病院を含めた複数の病院勤務の経験から、ソーシャルワーカーとして大切なこと、若いMSWに向けてのメッセージを、静かな中にも熱い信念を込めて語ってくださいました

■ プロフィール
 大学で特殊教育を学んだのち、東京都に入職。はじめは、療育施設の指導員として勤務し、のちソーシャルワーカーとして、複数の療育施設に勤務。病院勤務は都立大塚病院を皮切りに、神経病院、広尾病院を経て、現在は東京都職員共済組合青山病院のソーシャルワーカーとして活躍中。

■ワーカーとしてのスタート −指導員からワーカーへ

 都に入職して、はじめに勤務したのは北療育医療センター城南分園で、5年間指導員として働いた。指導員は一人だった。MSWが1人いたので、自分がMSWになったときには、お手本にできた。
 ワーカーとして初めて勤務したのは、多摩療育園で、開設2年目で一人職場。相談室に応接セットがあったけど、スタッフから「ワーカーって何する人?」、「応接セットなんか置いちゃって」って声は、遠くや近くから聞こえてきた。「困ったなあ」、理屈で説明してもしょうがないから、一緒に仕事をした。何年か経って、「必要な人」、「あの人に相談すれば」って思ってもらえるようになった。多摩療育園は小さい施設だけど、あらゆる障害の子どもに対応するため、多職種の人と一緒に仕事をしたことが、総合病院で役に立っているわ。

■先輩たちに支えられた
 ケース会議で他職種のスタッフと話し合うことはできたけど、ワーカーは一人で、他のスタッフとは「寄って立つところが違う」ので、「ワーカーとしてこれでいいのかな?」って悩んだ時期があった。そんなとき、都立だけでなく民間も含めた療育施設のワーカーの集まりがあり参加したら、先輩が大勢いて、雰囲気もとてもよくて、その場で相談もできるし、情報もいっぱい入ってきた。この会があったこと、先輩の話しを聞くことで、わたしはどれだけ救われたか (注1)。
 この会で、普通校に就学した障害を持った子どもを対象にアンケート調査とか一緒にやって、研究発表もしていたの。仕事が終わってから集まって、時には泊りがけで。大先輩たちが、対等に扱ってくれた。
 今、自分が長くワーカーをやってきたことで若い人達にお返しできるものはないか、と思うのは、そういう先輩がいて、本当に救われたし、いっぱい学ばせてもらったから。
 注1) この会のことは東京MSW vol.289(前号)で内藤会長も「大塚隆三さんを偲んで」の中でふれています。

■ 療養の場から病院のワーカーへ
 初めての病院は開設2年目の都立大塚病院だったのね。療育施設からナーシングホームに1年いて、それから病院のワーカーになったわけだけど、療育での経験が役に立っていると思うことがある。大塚病院に転勤するときは「怖い」って思った。ずっと療育の場だったから、病院のことも知らないし、制度も限られたことしか知らないし、病院関係のワーカーさんの知り合いもいないし、不安だらけだった。療育施設やナーシングホームは「生活」を見ることができたけど、病院では患者さんと家族とは病気になってから会うから、元気なときや「生活」がなかなか見えてこないのよね。
 大塚病院では、リハ科担当になり、家屋改造のための家庭訪問もよく行った。わからないことは、スタッフや同僚にも聞いた。わかったふりをするよりいいと思ったから。もちろん、聞けなくて、後からもう一度聞いたり。神経病院でも「神経病院としては新人です」って言っていた。神経病院では、病気の性格上、先を見ながら今どうしたらいいのか、確定診断のショックや死への恐怖に寄り添いながらゆっくりじっくり関わることができた。長く勤めると辛くてしんどくなったけど、周りのワーカーと辛さを共有できた。病気を理解するために、相談室で院内医師と一緒に神経難病の勉強を月1回していた。次の1年は週に1回ケース検討会もやった。

■ 若いMSWへ
 わたしたちは、病気になってからの患者さんに出会うから、「こんなによくなった」って言っても家族は元気な時と比べて「まだまだ」って言う。スタートラインが違うのよね。そのことをわたしたちは忘れてはいけないと思う。今の総合病院や救急病院の「すぐ転院先を」という流れの中で、「生活」やこれまでの生き方を知ることはとても難しいと思う。「早く転院、早く退院」っていうペースにはまって苦労したり辛くなったりすることがあると思うけど、ちょっと視点を変えて今までの生活のことを聞くと家族も緊張が解けて上手くいくこともあるわ。
 それから、自分が転院に関わった患者さんがどうなったのか、気になった患者さんだけでもいいからその後の経過を知ることも大事だと思う。目先のことにとらわれたりふりまわされたりしがちだけど、「少し引いてみてみる」ことや、今の社会のありようとの関係を考えたりして、立体的な見方ができるようになれるといいなと思っている。
(談:田中千鶴子さん、インタビュアー:鉾丸俊一・柏倉剛彦・朝比奈朋子、文責:出版部

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