編   集   班

 「老健医師の立場から」

 確かに診療報酬算定上の制約上の問題があることも事実ですが、医療行為が必要な方の受け入れを左右する大きな問題点として職員配置基準の問題が挙げられます。基準では利用者100名に対して医師1名ということになっておりますが、実際は私の例で言いますと、週に2日の公休もありますし、もちろん夜間は不在です。医師の不在の間は看護師がごくわずかな人数で(特に夜間は1名)見守っていく状態となり、本当の緊急時には協力病院に依頼していくことになります。
 その結果、医療行為の中でもリスクが高いとお受け出来ない現状があります。例えば「中心静脈栄養法」や「鼻腔栄養」など、万が一抜去された場合、これらの挿入は医師にしか認められていませんし、また看護師で行ってよい医療行為に関しても現実的には看護師の臨床経験などで能力に差があるため、医師としては看護能力を越える方を預かるという決断を下すことは極めて困難です。受け入れ可能な医療行為の範囲としてはその老健医師の専門性や協力病院の体制によっても異なるかと思われます。
 最後になりましたが、忘れてはいけないのが老人保健施設の役割です。そもそも老健とは在宅復帰を目的とし生活リハビリを行っていく、というのが本来あるべき姿かと思われます。ソーシャルワーカーの方々にお願いしたいことは老健を単に患者さんの移動先として考えるのでなく、老健の先に在宅復帰という目標を見据えて支援していただきたいということです。我々もそのような方々を支援していく意味では受け入れ可能な範囲の拡大に向けて努力していく必要を感じます。



「老健のワーカーとして思うこと」

 「医療行為があると老健の入所ができない。」これは老健側の職員間においても常に疑問視されてきた所です。先の基礎構造改革時には、入所利用者が医療保険で他科受診ができるようになることに多くの期待が寄せられたのですが、実現しませんでした。
 前号ご指摘の通り、入所制限には、介護保険になっても相変わらずマルメ方式が続いているという、診療報酬算定上の制約の影響が大きくあります。
 さらに加えて職員の配置の問題があります。ユニット式ケアの潮流もあり、基準人員配置を上回る職員体制をとる施設は、確かに増えています。厚生労働省発表のデータでも、平成13年時点の職種1人あたりの在所者数は、介護職1:2.8、看護職1:7.8となっています。しかし問題は夜勤帯にあります。老健の標準的な規模は100床ですが、夜勤帯では医師不在、医療行為を行えるのは看護師1名のみ、というのが通常です。少ない人員の中で救急の要請や家族への連絡を行わなくてはならない。この受診に至るまでの経過を鑑みると、「医療行為を必要とする可能性のある人は受け入れないほうが無難」という発想に結びついても不思議ではありません。
 しかし、老健自体の自助努力でなせることは全くないのでしょうか。
 東京では介護保険前の駆け込み設立が多く、その際に老健に関する情報もずいぶん錯綜しました。他科受診では情報内容・方法ともに複雑なことも有り、事務方やソーシャルワーカーにすら正確に把握されず、むしろ「そういう難しい方は受けなければ、面倒がない」と、安易な方向に流れている実情があります。ワーカーの本分に正確な情報の収集と提供があるのは言うまでもありませんが、ワーカーが基準配置されている老健におけるこの状況は、嘆かわしいと言えます。
 制度はすぐにはかえられませんが、己が拠って立つ制度を正確に理解し、利用される方々の権利が安易な発想で脅かされることのないように、また直接介護にあたる職員に過度の負担がかからないようにすること、これはすぐにでも対応が可能であると思います。
 老健のワーカーのみならず、全てのワーカーの、更なる努力と施設への働きかけが期待されていると考えます。


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