夜間講座開催のご報告
社会問題対策部 編集班
去る2月27日に教育部と社会問題対策部の共催で「自己決定とソーシャルワーク援助」と題して夜間講座を開催しました。今回の夜間講座は、講義という形式ではなく、各分野からパネリスト、コメンテーターを迎え、それぞれの立場から自己決定についてソーシャルワーカーとしてどう考えるのか語っていただき、患者本人や家族それぞれの権利、自己決定と向き合ったときソーシャルワーカーとしてどうあるのか、皆様と一緒に考えていくことができればと当日参加された皆様からの意見や感想もいただきディスカッション形式の講座となりました。講座のテーマが自己決定とソーシャルワーク援助に決定したのは、ソーシャルワーカーとしての「ゆらぎ」がきっかけでした。日々の業務の中で、患者本人の思い、自己決定と家族の思い、自己決定の狭間で、どこまでがそれぞれの権利でどこからが過剰な要求なのか、ソーシャルワーカーとしてどうあるのか考えさせられること、自己決定を尊重するということの難しさ、時に時間的な制約の中で患者本人・家族の自己決定を置き去りにしてはいないかと感じさせられることがあります。そのようなソーシャルワーカーとしてのゆらぎをどのように皆受け止めているのか、また同じように皆ゆらぎを抱えているのか、皆様と共有できればとこの講座を企画いたしました。この講座を通じて、答えの無い問題であること、皆日々あのかかわりで良かったのか他にもっと良い方法があったのではないかと悩み、葛藤していることを共有できたように思います。ますます自己の責任が問われるこの時代に、権利、自己決定というものについて今一度真剣に考え、ソーシャルワーク援助について又はソーシャルワーカーとしての自分を振り返る良い機会になったのではないでしょうか。参加された方々からも感想が寄せられております。併せてご覧下さい。
パネリストとして参加して
和光クリニック 冨田浩二
近年、精神障害者に対する処遇は障害者基本法やノーマライゼーションの考え方が普及するにつれて自己決定権についても配慮されてきている現状があります。しかしながら、現在もなおそれが充分とはいえないことは、特に精神病院における不法な処遇がマスコミを通じて報道されることからもいえると思います。精神障害者の処遇の歴史は精神病者監護法(1900年)にはじまる社会防衛施策としての私宅監置、戦後は精神病院への入院(社会隔離)が奨励され37万床の精神病床を有するに至り、そのなかには社会復帰施設等の社会資源など地域での受け皿が無いまま社会的入院とよばれる一群が存在していることは周知のことでしょう。今でも入院に関しては本人の同意が無くとも入院治療をすることができる措置入院、医療保護入院の制度があることからも精神障害者の自己決定をはじめ処遇はひどく制限されているといえるでしょう。
その他精神障害者の自己決定を妨げる因子として、第一に障害者自身の問題として本人の能力に問題があり現実検討ができない、あるいは不十分であることが挙げられ、いわゆるニーズと本人の能力が著しく乖離しているため、結果として自己決定が制限されることがあります。生活技能の問題として捉え訓練することである程度は改善されると思います。第二に私たち援助者の問題としてパターナリズムが挙げられます。失敗が症状の増悪に繋がるという心配から自己決定を制限することがあり、ときにそれは障害者の自立を妨げることにもなるという危惧があります。第三に社会の問題としては少ない社会資源が本人の自己実現ひいては自己決定を阻害することが挙げられます。これらの3つの因子が相互に影響しあって精神障害者の自己決定が妨げられているように思われます。
特に留意したいのは、援助者と障害者との関係性がどのようになっているかという私たちの問題としてのパターナリズムを考えてみることが必要であると考えます。
パネリストとして参加して
狭山ささえあい福祉公社 在宅介護支援センター 江原篤
私たちは何かを決定するにあたって、周囲の人に情報の提供や助言を求めることが多いと思います。すべてのことを自分だけで決定することはゼロに等しいのではないでしょうか。もちろん最終的に結論を出すのは自分自身(さまざまな意味でそれができない方もいらっしゃいますが)です。それは決定した事柄について責任を持つということにもつながります。クライエントも同じだと思います。生活のなかでのその問題が重大なものであったり、複雑であったりすればするほど結論を出しにくいものです。そのような状況の中で、私たちはクライエントの自己決定できないニーズに耳を傾け、ともに考え、苦悩しながら折り合いを付けようと努力をしていくことになります。つまり、自己決定のプロセスに寄り添っていくわけですが、結論が導き出せないことも多くあるわけです。ただ時間だけは容赦なく経過していき、結論めいたものを無理やり出さなければならないこともあるでしょう。人によって決め方も、決められない気持ちもそれぞれなので、関わり方もそれぞれなどといったら無責任でしょうか。会場の方から「皆さんが同じようなことで悩んでいることを知り少しほっとした、励まされた。」という感想に一番励まされたのは私自身だったような気がしました。今回この企画にパネリストとして参加させていただきまして、ソーシャルワークというものを自分なりに改めて考えることができました。お招きいただき有り難うございました。
参加者からのご感想
佐々総合病院 大町幸子
その人にとって何が自己決定なのか、人生の中でどのような意味があるのか、今回の講座は日々の業務の中で悩み、悩みすぎてちょっと見失ってしまいそうな、そんな大きなテーマでした。しかし、パネリストの方たちの事例を共通の課題として捉え、会場で参加した人たちもそれぞれに考えられ、共有できたように思います。そして知識として学ぶだけでなく、参加者みんなで考え、みんな自分のことに置き換えて悩む、とても有意義な時間でした。学生の頃教科書で当たり前のように習う「自己決定の尊重」という言葉が、実際にソーシャルワーカーとして利用者の前に立ったときに、何を持って「尊重した」と言えるのか、言葉と現実が急に遠いものになってしまうということがあると思います。精神医療の中での自己決定、緩和ケアの中での自己決定、生活者としての自己決定、と様々な場面での自己決定と、その中でソーシャルワーカーがどのように関わるのか、どう向きあうのか、自分自身のソーシャルワークを振り返ることができた講座でした。
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