震災支援タイトル

一般社団法人 東京都医療社会事業協会         No.22 2013.9.1

災害支援ニュース
つたえる
心をつたえる…様子をつたえる…事実をつたえる…手立てをつたえる…気持ちを伝える

震災支援講演会①
「悲しむ力 悲しみに正面から向き合う
~ソーシャルワーカーのできる支援~」の報告

去る2013年7月31日(水)新宿家庭クラブ会館にて、中下 大樹氏を講師に震災支援講演会を開催しました。当日は50名以上の参加者が集まり、質疑応答を含め盛況の内に無事終了しました。その報告と参加者の感想を掲載致します。

「何があっても生きる」    

玄秀盛×中下大輔<白熱対談> 佼成出版社                                   武山ゆかり

 7月最後の日、都協会総務・平田部長と一緒に平成26年度の予算要望を猪瀬知事宛と都議会各会派を廻り、出し終えた足で、都庁から家庭クラブ会館に駆けつけた。会場設営のために、たくさんの理事や協力員が、暑い中、やはり職場から7時の開会に向けて急ぎ到着した。いつもなら遅れたり、ギリギリに到着のMSWが多い夜間研修だが、既に早めに到着の参加者も多くいて…。実は、声をかけた諸大学の学生さんや、大学教員となった先輩MSWのゼミ生たちだった。(アンケート感想参照)
 とても気さくな講師 中下大樹さんは、今日発刊という本を暑い中、運んで来られた。 以前仏教系ホスピス(緩和ケア病棟)の病院に勤め、多くの方を看取った経験や現在も続く新宿区で亡くなられた身寄りのない方の供養やお骨の引き取りなど、私たちの仕事に重なる経験を重ねられた方が、それでもつらかったと語られた沢山の被災者の死、大切に思う方を失った人々の悲しみの傍らで言葉もなかった日々、そして今思うことを1時間半に渡って語られ、会場をほぼ埋め尽くす参加者と一緒に、引き込まれてお聞きした。参加されたMSWには、ほぼ同年輩も多かったと思うのだが、1975年生まれと思えない、多くの人生経験とそこから得た深い洞察に、思わず頭が下がる思いだった。であるのに、謙虚な人柄からか、参加者に深く頭を下げられ、この日運ばれ、多くの方に買われた新刊書の売り上げもみな被災地に送られるとのこと、胸が熱くなった。
 何冊かの書籍のうち、この前日に刊行された「何があっても生きる」は、俳優・渡辺謙さんの演じたドラマで有名な新宿歌舞伎町の相談所「日本駆け込み寺」の代表 玄秀盛氏との「白熱対談」-孤立・貧困・自死の連鎖を断つ-というサブタイトルそのままに、大都会の、そして宮城県「駆け込み寺」(仙台市国分町)での、岩手県沿岸部での活動経験を話し、その思いを書かれたもの。その生い立ちや経済的な苦労を乗り越えて、支援の手を大きく広げているダイナミックな生き方が共通するお二人の、かみ合っているような、いないような対談は、それ故愉快で、人間の面白さに力が湧く。
 お二人の活動される新宿は、私も長く関わってきた日本の経済の縮図を日々感じさせるところだが、奇しくも、被災地支援でも、地域が重なった。かつて1995年の設立にも立ち会った「もやい」や、ふたたび仙台で一緒に、被災後の対応を話し合い、協働した『困窮者支援ネットワーク』の活動で、時間軸のズレは有りながらも同じフィールドで活動し、それぞれに支援を展開してきたことを、講演後の懇談で知り、心強い思いをした。そして、後日読んだアンケートからは、この日聞きに来ていた20歳前後の学生さんたちが、この支援を繋いでいって下さるだろうことに希望をつなぐことのできたうれしい講演会であった。
 今は猛暑の夏真っ盛りだが、今年の暮れもまた家のない人、餅代のない人、希望の持てぬ人に思いをはせ、何が出来るか、準備を始める秋がすぐに来る。この暑さで体を壊す人も多い。今年の越年支援には、ぜひ一緒に新宿で、墨田公園で、玉姫で一緒に炊き出しを手伝い、医療相談をしませんか?石巻の仮設支援も、福島の支援も、まだまだ続きますよ。

[参加された方々の感想]

[学生]

  • 生と死は紙一重だということがわかりました。震災で多くの人が悲しみきれないほど悲しんだと思いました。私は何も知らなかったんだなと感じました。そして知っておくべきだと思いました。

  • 震災がおこってから被災地のことはニュースで知るくらいしか出来ていなかったので、実際に中下さんが行ってその時に感じたことなどを教えていただき、福島で起きている問題や震災当時の状況について知ることができたので良かったです。機会があれば、自分で被災地に行って感じることが出来れば良いと思いました。

  • 今回は、お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。私は、今医療ソーシャルワーカーを目指しています。まだ座学をしている段階で、実践をしたことがないので、今回の講演をきいて、更に自分の感性はどういったものなのか考えさせられる時間になりました。
    一番強く心に響いたのが、感謝の反対は“あたりまえ”であるということでした。このことを聞いて、自分のこれまでの生活を見直すきっかけになりました。“あたりまえ”なんてないのだということを改めて感じることができました。
    今日は、本当にありがとうございました。

  • 被災地の現状や被災者の様子が分かってよかった。人の支援ということについてとても考えさせられる内容だった。今後の社会福祉の学びに活かしていきたいと思った。

  • 実際の被災地をスライドで見て、心がしめつけられる思いでした。今の自分には何ができるのかをもう一度考えさせられ、学ぶことが多くありました。ソーシャルワーカーを目指し学んでいる身としてとてもよい経験ができました。ありがとうございました。

  • 今回先生のお話で、被災地の状況を伺い、私なりにできることや、自分自身のことについて考えました。今後の研究やソーシャルワークの勉強に活かしていきたいと思います。貴重なお話をありがとうございました。

  • 今日は、とても貴重なお話しを聴けて良かったです。被災地の現状を、メディアで報道されていないことが知れました。自分の目でも見なければいけないなと思いました。これから、勉強していく中で今日の話は忘れたくないと思います。

[都協会会員]

  • とても、とてもよかったです。映像を見せて頂けて深く感謝します。また、包み隠さず、実際に起こった津波の話しをきけて、感謝します。一般的に人として、どのように生きていくかが、とても大切だと、改めて学ぶことが出来ました。ありがとうございます。 被災地の方のために、何かしていきたいと、いつも常に思います。思うだけでなく、実現していきたいです。

  • 被災地の生々しい話を聞くことができて、とても良かったし、胸に響いた。何かしてあげる、してあげなくてはというおこがましさが我々の支援でも陥りやすい落とし穴で共通していると思った。

  • 自分のソーシャルワークに対する姿勢を比べながら聞いて、改善点、今後の課題がみえました。気持ちをぎゅっと引き締められた思いです。

  • 「福島在住の方々の生の声」数行の文章に心を打たれました。軽々しく感想が書けない状況が様々に起きていることが分かっただけで収穫でした。

  • とても想像しきれない状況なのだと感じたとともに、自分ができる事の具体的な話もしてもらえた事で、より理解ができたように感じました。

  • とても良かった。災害、生死をめぐる生の言葉、福島で実際におきていてマスコミがとりあげない実情を知ってショックでした。もっと知らなければと思いました。質問に対してとても適格に回答されていて「う~ん」とうなされました!

  • 中下さんの活動(震災以外も含め)において、生と死のテーマは、必ずあった。人間には必ずあるものであるが、そのテーマを見つめることは大切だと思った。人を支援することは、私が難しいと感じている範囲を超えて難しいものだと感じた。
    「悲しみ力」には、支援者として必要な心の動きだと思った。

  • 衝撃を受けたと同時に、知りえなかった現実問題を教えて頂き、とても勉強になりました。これからの患者さんとの関わりについて考えさせられた部分もありました。 現代社会、大都会での様々な問題にも目を向けながら、今後も相談員として少しでもクライエントの役に立てるよう頑張りたいです。ありがとうございました。

  • 私たちが日々関わらせていただいているクライエントは、それぞれに、苦しみや悲しみを抱えられておられることが多い。時に、クライエントの苦しみ、悲しみに、私自身が押しつぶされそうになる。何もできない自分を受け入れ、話しを聴かせていただくことしかできない。ただそばにいることしかできない。
    とても心にしみる講演でした。人が生きること、死ぬこと、日々の出来事に真摯に向き合うことが大切なのだと感じました。「相手を敬う気持ち、配慮できる」それが、どんな状況下におかれても、すっと自然と出る人間になるには、日々の日常をどう生きるかなのか、考えさせられました。9月に石巻に行き、活動させていただく上で、被災地の方々は、3.11以降どんな経験をされてこられたのか、しっかり心にとめて、相手に向き合わせていただきたいと思います。

  • 生き死に、死んだあとまで人間には様々なことが起きる。すべて人間だから、と思って否定も肯定もしない…頭で考える中では理解しても、実際に自分が究極の立場に立ったらどうするだろうか。考える機会をいただいた。関心をもつ、援助者の自分は相手に関心をもつこと、自分の状態を分かることを意識していきたいと思った。

  • とても勉強になりました。被災地支援に参加したいです。

  • 死から生きることを見るという視点が、今まで考えたことなく興味深かった。そして、自己の“死”に対する意味づけを考えるきっかけになり、無性にお墓参りに行きたくなりました。ありがとうございました。

  • 被災地に限らず、日常の中でも、業務の中でも支援して思う部分があった。関心を持たれないことのむなしさというものは、共感できない程のものだと思うが、その人が思うこと、考えることを聞いていく中で察し、気付いていきながら、関係を築きながら痛みや悲しみをまず受けとめていくことが出来ればと思った。本当にいろんな方に関わって、その思いを聞いてこられたんだなと今回の講義を聞いて感じました。

  • 先生の感性に心揺さぶられました。先生のひとりひとりへの心の寄せ方がとても伝わってきました。お話頂いてありがとうございました。

  • よかった。中下さんの本を読んで、一度お話をうかがいたかったので満足。是非都協会も提携して応援してほしい。

  • 大変貴重なお話をありがとうございました。メディアを見聞きするとことと、現実の話との違いがよくわかりました。あの3.11の時に、職場で自分の出来ることを精一杯してきたのですが、まだまだそれが続いているのだと。 「死者への配慮。生き残ってしまったと感じてしまう遺族の思い。」「愛の反対は憎しみではなく、無関心であること。」「どんな人も自分なりの人生を精一杯に生きている。その背景をみていくことが大切。」など、これから援助職として忘れずにしていこうと感じました。今日は本当にありがとうございました。自分の出来ることは何か、考え続けていこうと感じました。

  • “自分がどうしたいかと求められているものは違う”などSW業務に直結するお話しを伺えてよかった。 ・支援の中で自分をみつめる

  • 自分がどう関われるかというのは、相手が何に関心をもって苦しみのサインを出しているのかありきなんだということに、考えさせられました。

  • 軽い気持ちで参加しましたが、中下先生の一言一言が胸にグサグサと突き刺さりました。 今回参加して本当に良かったと思いました。TVでは目にしなかった生々しい現場の写真や声を見聞きすることが出来、考えさせられました。色々な体験をしてきた先生だからこそ語ることが出来る話をうかがい、真の意味で“強い”かたなんだなあと思いました。職場のみならず、友人にも広めたいと思いました。

  • 答えは本人の中にある、相手のことを変えることはできないと先生からも教わり、SW研修でも教わった内容だなと思いました。

  • スライド、写真があってよかったです。

  • 参加して良かったです。被災地の状況をスライドで沢山みせて頂いたり、直接出会った方々とのエピソードは聞いていて、心詰まるエピソードばかりでした。ソーシャルワーカーのできる支援とは何か、悲しみ、辛さを抱えている人の言葉を聴いていくこと、その方が今なぜそう思っているのか背景に思いをはせ、傾聴をしていくことと感じた。ソーシャルワーカーとしてだけではなく、危機的状況で、自分はどうなるのか、どう行動するのか、「人」としての在り方を考えさせられた。

  • 全体を通して、仕事の参考、勉強になりました。自分を見つめて、仕事に臨みたく存じます。「自分がいかに寛容になれるか」普段からの心がけが、いざという時に出るという言葉を大切にしたいと思います。 ・仕事のみならず、人との関わりで、たくさんの反省がありました。何回言ってもダメ、何度も裏切られる期待、それを認めるには…。そこにエネルギーを注いでしまっている…。過去と他人は変えられない!
    その通りだと思いました。互いを感謝し、尊敬し合えば「ありがとう」の循環で活性化。中下さんのお話が聞けて本当に良かったです。

  • 人は死について常に考えないといけない、そうでないと生きる力が湧いてこないと思いました。親戚一同が福島県の浜通りの人間で、震災が起きてからよく会うという皮肉な事態です。会うたびに、悲しみや悔しさは深いはずなのに、明るく生きて、必ず大熊町と富岡町の家に戻る信念があり、「強すぎる」と思いながら東京に帰っています。
    福島に対する思いは今までほとんどなかったですが、今さらながら自分のルーツはここなんだなと思い、できることをしたいと思っています。

  • 3日前の福島の青空、変わらなく澄んでみえる夏の空が印象的だった。死から生をみるときの社会の矛盾をみてきた先生の話にひきこまれた。生と死のはかなさに対し、我々がどう向き合うのか。死者を弔うことができる人々の心と社会の豊かさが失われているのは、誤った「個」の捉え方にあるような気がする。他者の苦しみやつらさに人々が寄り添えるようにソーシャルワークが何かできることを見出していきたい。

[会員外]

  • ひとつひとつのお話が強烈でした。時間をかけて消化して周りにも伝えていきたいと思います。

  • 実体験・写真を多用されてのお話で身につまされました。

「原発子ども・被災者支援法」のその後

震災支援対策委員会
委員長 加藤 淳(牧田総合病院)

 今年3月2日、都協会主催にて、「原発事故による分断と対立を超えて~原発事故子ども・ 被災者支援法の成立と今後の課題」をテーマに、法律制定を手掛けてきた弁護士の河﨑 健 一郎先生を講師として講演を行っています。
 この講演の中で、2012年6月21日に法律制定がされたにも関わらず、「基本方針が定ま っていないこと」「予算措置がされていないこと」などの問題点が挙げられていました。
 その講演から半年近くが経った今でも、基本方針が定まっていない現状です。そして8 月22日、福島県内及び避難生活を送られている住民の方々を中心に、支援法の早期具体化 を求め、国に提訴を起こしました。なお河﨑先生はこの訴訟の弁護団の一員を務められて おります。
 今回の提訴の背景、何故法の実施がこれだけ遅れているかについて、河﨑先生による記 事が8月22日のyahooニュースに掲載されています。
  ○解説:子ども・被災者支援法をめぐる裁判は何を訴えているのか(河﨑 健一郎)

 なお、その後の動きとして29日付けで、原発事故発生時に相当な線量があった場所を「支 援対象地域」とする基本方針案がまとめられたことが報道されています。近く同案が公表され、パブリックコメントを行った上で閣議決定されるとのことです。
 3月の講演において、10数名の参加者しか集められなかったという大失態を晒していま す。社会問題対策部長として反省と後悔の念を抱いています。
 河﨑先生は講演において、私たちMSWに向けて、「避難者とうまく繋がりを持つこと」、 そして「その声をどう反映させるかが大切である」と語られました。
 講演に参加出来なかった方々も是非強い関心を抱いてください。そして、また改めて河﨑先生とのお話しの機会を都協会において設けたいと考えております。その際には出来る限り多くの方々に参加して頂きたいと望んでおります。

[震災支援講演会②のお知らせ]



「あなたならどうする? もし福島の病院に勤務していたら」


講師:岩﨑 賢一氏 (朝日新聞社記者、『プロメテウスの罠~病院、奮戦す』筆者)
日程:2013年9月7日(土)14:00~16:30 / 交流会17:30~
会場:あうるすぽっと 豊島区立舞台芸術交流センター 3階 B会議室
※参加費無料、事前申し込み優先、定員110名です。


 7月31日に引き続き、第2回の震災支援講演会を開催致します。
 申し込む方法、講師のプロフィール、会場へのアクセスなど詳細は当協会のホームページ内「イベント情報&報告」をご確認してください。
URL:http://www.tokyo-msw.com/events/013/0130730.html
 会員以外の方々、ソーシャルワーカー以外の一般の方々も参加可能です。
多くの方々の参加をお待ちしております。

 

 「つたえる」では、会員の皆様からのご意見を募集しております。震災と、その支援に関しての意見や想い、伝えたいことなど、是非お寄せして頂ければ幸いです。字数など、特に細かい制限はございません。
 掲載希望の方は、都協会事務局にご連絡の程、よろしくお願い致します。

発行 社団法人 東京都医療社会事業協会 震災支援対策委員会
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