震災支援タイトル

一般社団法人 東京都医療社会事業協会   No.31  2015.1.31

災害支援ニュース
つたえる
心をつたえる…様子をつたえる…事実をつたえる…手立てをつたえる…気持ちを伝える

 1995年1月17日午前5時46分に発生した阪神淡路大震災から、今年で20年の時を経ました。震災の被害ですが、お亡くなりになられた方々が4000名以上、負傷された方々が4万人以上、そして3名の方が未だ行方不明のままとなっています。
 先日の17日は直接神戸に出向いた方、自宅で黙祷された方、多くの方々が様々な想いを馳せたかと思います。
 阪神淡路大震災当時、多くの医療ソーシャルワーカーが支援に携わっており、当協会の武山会長もその一人です。20年前からの関わりが、その後の東日本大震災への支援にも繋がってゆきます。今号では、その想いも含めた会長からの報告を掲載致します。
 なお、前号で予告しました、宮城県MSWとの交流会と宮城県亘理郡訪問の報告ですが、近日発行予定の次号にて掲載致します。ご了承ください。

(編集担当より)


[1]20年目の神戸

 武山ゆかり(豊島区医師会)

 神戸の街を歩くと、その角から黒田裕子さんが笑顔で現れるような気がしてならない。
 昨年7月に神戸で開かれた「日本ホスピス・在宅ケア研究会」で逢ったときは、スタッフTシャツ姿で、にこやかに参加者に声を掛けていた。昨年9月に亡くなられた彼女は、震災後4年間仮設住宅に住み込み孤立死を防ぐために働き、災害看護支援機構の理事長、ひょうごがん患者連絡会の代表としても活動していた。看護師ではあるけれど、活動は受賞された朝日福祉賞にふさわしい。震災で生き方が変わったという点で仲間と感じて来た。
 神戸との付き合いは、阪神淡路大震災の発災後だが、20年も通うと、懐かしい心の友がずいぶんと出来た。災害の被害を少しでも減らすためには-減災の視点から、被災後の聞き取りで歩いた兵庫県医療ソーシャルワーカー協会のMSWの方々、患者団体や、当時支援から排除された路上生活者の支援グループ、その拠点となった教会のシスター、NPO法人になった地域の住民と災害を考えるボランティア団体。それを支援する研究者、地元企業の社長さん、町会長さん、熱い若者。1度しか会っていないが「人と防災 未来センター」職員は、持参したMSWの支援の記録を、資料室に置いて下さった。このセンターが出来て、災害を学ぶ人には説明が一言で済むようになった。「まず、行きなさい、それから資料室で思うところを探し、歩きなさい。」と。

 20年目のその日を迎え、平成生まれの若者、初めて来神する友人を伴い長田区を歩いた。空襲後の都市のように何町にも渡り焼け野原になった地域、老朽化した長屋が連なって倒壊した大正筋裏手の路地、目の前まで火の迫った小学校、焼け跡を、倒壊家屋を越えて、避難所へと組合員の安否確認に歩いた生協病院。ボランティアに入ったかつての街は今、金曜の午後だというのに商店街も閑散としていた。あの時、街中焼け焦げた臭いに、冷たいおにぎりも喉を通らず、前日の車中泊と一日歩いて痛む体に、傾いた店先から渡されたアツアツの明石焼きが、柔らかく暖かく浸み込んで、このおばちゃんのためにガンバロウと素直に涙が流れた記憶が舌によみがえった。

 復興とは、元よりももっと豊かに、幸せに、街も生活も元気になることのはずだ。きれいな商店街や高層復興住宅は出来たけれど、さびしい街は鉄人28号の拳が宙に行き場を失って見える。「戻れなかった人が沢山おるんですわ。」と、なんとか共同住宅を建てた人や 商売に戻れた人は、遠く賑わった仲間との日々を半ば悔しく懐かしく思い出す。
 「再開発、再開発とせかされてねぇ、お金が出なくなるう言われて…、仮設も出なあかんやろ~」「あわてることなかったんやわ、東日本の人にそう伝えなあかんのよ」と、行政の失策を教えてくれる。街づくり団体の検証作業は引き継がれ、今、東北の街再建に専門家や研究者の支援が結び付き、20周年記念行事に東北の若者が参加して討論に加わる。
 「住民の意見が大事なんやわ」「生活を壊して再建は無いんだから」といっても、高齢者のみが残る地域は先が無い。いかに若者を引き付け、働く場を確保するか、それが課題だ。
 神戸でも、震災後の街を分けた空港建設や対中国貿易の無駄遣いが指摘されて、トラック輸送に変わっていた輸送を、港の整備と船舶に戻せばと。鉄道輸送も見直されて、港町の良さや力が期待されている。かつての魅力を失っては、戻る人も、新しく住もうという人もなくなる。確かに、復興とは、戻し、栄える様に進めなければいけないのだ。神戸の教訓が、東日本に引継がれ、東日本の経験が、検証され、次に語り継がれて予防や減災や、復興の知恵になっていかなければ、失った多くの命や生活は浮かばれない。

 今年、発災のまさにその時間に、神戸を愛した作家陳舜臣さんが亡くなった。 神戸の震災後起こった台湾の地震に、支援のお返しに神戸の団体が入った。神戸でも行なった、地域の人々が心のよりどころとする集会所の建設に、同じ方式で丹後の古民家移築を企てた。そんな縁で、台湾とかかわりの深いこの作家が、この団体の古老に蔵書の公開を依頼した。昨夏、メリケン波止場に近い古い税関の建物に開設された「陳舜臣アジア文藝館」に運営を任されたこの方の案内でひと時を過ごした。神戸に暮らした作家の珠玉のエッセイ集や歴史の証言となる数々の作品を生み出した書斎の机、書画が展示され、学芸員の代わりに恰幅のいい、社会の第1線を退いた灘高「同級生」たちが交代で「受付」ボランティアで詰めていた。良き時代の神戸を愛した作家を、またその作品を愛する方たちの無償の仕事である。
 こうした、その土地の文化を守る人々がいて、歴史に抗わない、一人一人が力を発揮することのできる開かれた街が取り戻されることが、復興なのだと、改めて思った。昨夕の夕刊1面には、陳舜臣さんの訃報が大きく載り、今朝の朝刊にも大きな写真と記事が載った。今回一緒に文藝館を訪れた、平成生まれの若者は、「手塚おさむ・陳舜臣監修漫画三国志」の愛読者だった。知らずに偶然同行して知った作家の作品と死に、どんな歴史を感じるのだろうか。

 先に書いたように、神戸にはまだまだ、歴史のページに登場するような方が、日々失った生活や街を取り戻そうと奮闘している。その経験を伝えるべく、東日本と行き来して、何とか力になりたいと、だが複雑な力や被害の大きさに阻まれて、思いを伝えきれずに、しかし他人事と思えずに通い、疲れて神戸に帰ることを繰りかえしている知人もいる。 大きな災害は、人の人生を、また生き方を大きく変える。そのことを知って欲しいと、私も通い、発信して20年経った。今は、神戸の街は時々帰る懐かしい場所になった。ぜひ、一度あなたも、この美しい、だが、まだ復興途上の街を訪れて欲しい。(2015.1.22記)

編集担当より

「人と防災未来センター」  
 文中で触れられている「人と防災未来センター」についてご紹介致します。
 センターは阪神淡路大震災の経験と教訓を後世に継承し、国内外の災害による被害の経験に貢献するために設立されました。
 センター内には多くのシアターやギャラリーが設立され、様々なワークショップが開催されています。また、報告の文中にもある様に、資料室には災害する多大な資料が揃えてあり、入館者はどなたでも閲覧可能となっています。
 関西に行かれた際には、是非一度は足をお運びください。
 詳しくは下記のアドレスにてホームページをご参照ください。
 http://www.dri.ne.jp/wordpress/index.php

所在地:兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-5-2
電話番号:078-262-5050
※上記写真は「人と防災未来センター」の承諾を得て掲載しています


上記の写真は昨年12月に撮影した「神戸ルミナリエ」の様子です。「神戸ルミナリエ」は、震災の犠牲となった方々の鎮魂の意を込めるとともに、都市の復興・再生への夢と希望を託し、震災の記憶を語り継ぐことを目的とし、毎年12月に開催されています。

[2]電話相談 「医療と福祉110番」の期間です

 この号が出る頃には既に始まっていますが、1月26日(月)~31日(土)は「医療と福祉110番」が開催されています。
 今回、都内に避難されている方々への支援を強化するため、東京都避難者支援対策課を通じて、都内に避難されている方々、約3000世帯にも広報がされています。
 今回の電話相談が、医療ソーシャルワーカーの存在が広く一般に周知されることと、多くの方々にとって、繋がりの足掛かりとなればと思います。

[3]他団体の活動のお知らせ

NPO法人「支えあう21世紀の会」主催
“ふくしまの今を知る”復興支援セミナー
「新しい福島創りを応援しよう!!」 ~考えよう 協力できること~

日時:2015年2月11日(水・祝)13:00~17:00
場所:中野区立産業振興センターBF多目的ホール
入場無料、事前申し込む不要

NPO法人「支えあう21世紀の会」からのお知らせです。この会は、医療ソーシャルワーカーや教育者、社会福祉士から成る団体で、10年前に発足されています。震災に関しても、被災地訪問やセミナー、シンポジウムの開催、支援コンサートなど、様々な支援活動に取り組まれています。
 今回のセミナーも支援活動の一環として開催されます。当日は当協会からも活動報告を行います。
 詳細は団体のホームページ(下記アドレス)をご参照ください。
 http://www.tokyo-senior.jp/support/ams21/

○去る1月11日(日)、南大塚ホールにて震災支援講演会「あなたとつくる その日の備え」を開催致しました。当日ご協力・ご参加して頂いた方々には大変感謝致します。当日の詳細に関しては、当ニュース及び東京MSWにてご報告致します。

  「つたえる」では、会員の皆様からのご意見を募集しております。震災と、その支援に関しての意見や想い、伝えたいことなど、是非お寄せして頂ければ幸いです。字数など、特に細かい制限はございません。
 掲載希望の方は、都協会事務局にご連絡の程、よろしくお願い致します。

過去のバックナンバーは当協会のホームページにて閲覧可能です。
http://www.tokyo-msw.com/top_links/shinsai/tsutaeru/saigai_news.htm


発行 一般社団法人 東京都医療社会事業協会 震災支援対策委員会
〒170-0005
東京都豊島区南大塚3-43-11 福祉財団ビル5F
電話・FAX : 03-5944-8912
Mail:ttn82yj27c@mx10.ttcn.ne.jp